MBA流クリニック経営

第2回コラム:クレームに対応する時の基本話術
~「初期対応」が早期解決の決め手~

株式会社 エンゴシステム
代表取締役 援川 聡

受付で騒いでいる声がするので、よく聞いてみると、患者さんが受付スタッフにクレームの範囲を超えた暴言を浴びせている。過去にこのようなシーンに遭遇したことのある医療者もいらっしゃるのではないでしょうか。
クレーム対応は”初期対応”が特に重要です。初期対応を間違った場合、患者さんの怒りに火を注ぐこともあります。ここで実際に起こった事例を紹介しましょう。

【事例】

受付スタッフAが忙しく働いていたところに電話が鳴りました。高齢の患者さんからで、体調が回復せずパニックを起こしかけているようです。

患者:
「(ヒステリックに)薬をのんでも全然良くならない!どうなっているんだ!」
受付スタッフA:
「先生がおっしゃられたように、一日3回お食事の後に5日続けて飲んでいただきましたか?」
患者:
「言われたとおりに飲んでるが、ちっともよくならん!間違っているんじゃないのか!」

受付スタッフAは繰り返し説明しましたが、患者さんは耳が遠い上、理解ができないようでイライラが溜まってきました。Aもついには業を煮やし、こう言いました。

受付スタッフA:
ですから先ほども言いましたように…」
患者:
「なんだその俺を馬鹿にしたような言い方は!」

受付スタッフAの対応は、結果として患者さんの怒りに火を注ぐ形になり、収拾がつかなくなりました。

不用意な一言で失敗を犯してしまうことがあります。その代表的なフレーズが「だから」「ですから」「だって」「でも」といった“D言葉”です。一方的にまくしたてられたり、非難されたときにはつい反論したくなるものですが、クレームの初期対応時には封印しましょう。
その代わりに使うのが“S言葉・さしすせそ”とギブアップトークです。

“S言葉・さしすせそ”で誠意をみせる

“S言葉・さしすせそ”は同調・共感・お詫びの気持ちを表し、クレームから逃げずに責任を持つ姿勢が相手に伝わります。S言葉でつないでいくうちに興奮も収まり会話がスムースに流れるようになります。たとえ3分でも「話を聞いてもらった」という実感をもってもらえるような聞き方をして、できるだけ不平・不満を吐き出してもらうよう努めましょう。

【覚えておきたいS言葉】
  • 「さようでございますか」
  • 「承知しました」
  • 「失礼いたしました」
  • 「すみません」
  • 「そうなんですね」
“ギブアップトーク”で弱みをさらす

こちら側の落ち度かどうかその場で判断できないのに、相手が執拗に恫喝する、その場で即答するや特別待遇などを要求するといった態度に出た場合は、早めにギブアップして「即答できない」「無理だ」ということを繰り返し伝えましょう。私はこれを“ギブアップトーク”と名付けています。

【覚えておきたいギブアップトーク】
  • 「私一人では判断できません」
  • 「大切なことですので、しっかり協議してお返事いたします」
  • 「お急ぎかもしれませんが、今すぐというわけにはいきません」

【ギブアップトークの使い方】対応者が責任者の場合

患者:
「責任者を呼べ!」
責任者:
「責任者は私ですが、協議しない限りお返事はできません」
患者:
「それでも責任者か!頼りない奴だ」
責任者:
「はい、情けない限りです」
患者:
「ネットに書き込むぞ!」
責任者:
「患者さん個人の考えに私どもがどうこう言う立場にはありません」

このように相手の土俵に乗らないことが肝要です。このギブアップトークによって、相手方も突きどころがなくなり「無理な要求」だと分かれば引き下がります。度を超えたクレームに対応するときの基本話術として是非覚えておいてください。

筆者プロフィール

援川 聡

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株式会社エンゴシステム
代表取締役

大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたクレーム対応コンサルタント。2002年「困難なクレームを解決し、企業の危機管理を援護する」をモットーに(株)エンゴシステムを設立。クライアントの“相棒”としてリアルタイムでサポートする傍ら、講演や執筆活動などを通して様々な機関に解決方法・リスクマネジメントのノウハウを伝授している。事例を盛り込みながらの講演は迫力に満ち、「説得力が違う」と聴講者からも絶大な信頼を得ている。