MBA流クリニック経営

第3回コラム:クレーム教育をまだしていない院長必見
~色分けによるクレームの対処法 最初は「ホワイト」扱いで~

株式会社 エンゴシステム
代表取締役 援川 聡

患者さんのクレームをお聞きしているとだんだんと要求事項がエスカレートし、当初穏便に話していた患者さんが手を付けられなくなってしまったなどというケースをお聞きすることがあります。
第1回のコラムでは、「気配り」でクレームを未然に防ぐ方法を、第2回では、起きてしまったクレームへの対応策について、”初期対応”が特に重要だということをご説明しました。今回のコラムでは、相手の言い分や要求が変化していく場合に使えるクレームの分類と対処方法についてご紹介します。
医療機関に寄せられるクレームは、職員に非があるものから、悪質なものまで様々ですが、その目的や内容から、「ホワイト」「グレー」「ブラック」の3つに色分けすることができます。例えば、患者さんの正当な要求は「ホワイト」、言いがかりや理不尽な要求を目的とした悪質なものは「グレー」、愉快犯などによる〝社会通念〞を逸脱したクレームは「ブラック」に分類できます(表1)。クレームを色分けすることで、自分が対応しているクレームがどういうタイプのもので、どのように対処していくべきかの参考にできます。

表1:クレームの色分けの仕方と対処法

種類 特徴 対処法
ホワイト 患者さんからの正当な要求。 クレームを真摯に受け止め、同僚と共有し、「患者満足」を高める機会ととらえる。
グレー クレームの動機や目的を見極めるのが困難。自分の怒りにまかせて文句を並べたてたり、自己中心的で、理不尽な要求を繰り返す傾向がある。 職員の耐性を強化し、冷静に相手の言い分を聞きながら、折り合いをつける。
ブラック 〝社会通念〞を逸脱した要求。金銭・特別待遇の要求を繰り返す傾向がある。 クレーム対応からスイッチを切り替え、警備員を呼んだり、警察に相談するなどといった対応策に切り替える。

色分けを意識したクレーム対応

ここでは、色分けを意識したクレーム対応について3段階に分けて説明していきます。職員に寄せられるクレームには、純粋に「ホワイト」一色のものもありますが、「グレー」から「ブラック」へと変貌するクレームもあります。しかし、重要なことは、こちら側の対応は、どのクレームも最初は「ホワイト」で、患者満足を意識して対応していくことです。相手の容姿や声の大きさによって、クレームを「グレー」や「ブラック」扱いするのではなく、手順(ステップ)を踏んで対応していきましょう。

ステップ1:最初は「ホワイト」で対応する

最初の対応の仕方として、クレームの色は「ホワイト」で、ポジションはニュートラルだということです。相手の印象や怒声にとらわれず、まずは「ホワイト」扱いで、丁寧に接することから始まります。ここでは、患者さんの言い分に共感・傾聴し、親身になって接することが重要です。企業の「顧客満足度(CSカスタマーサティスファクション)」を例に説明すると、クレームは患者さんから頂戴する「ご不満・ご指導・ご要望」としてとらえます。クレームを真摯に受け止め、同僚と共有し、「患者満足」を高める機会ととらえる姿勢を示したいものです。

ステップ2:「グレー」なクレームは冷静に本質を見極める

ステップ1で解決しなければ、次はクレームの実態を把握する段階に入ります。相手の動機や目的は何かなど、クレームの本質を見極め、対処することが重要です。ここでは、「グレー」なクレームと対処法を2つ紹介します。

  1. ① 話すこと自体が目的のクレーム:医療行為や業務に対する具体的なクレームではなく、意見を述べること自体が目的なため、時間を費やさなくてはいけないことが多いです。このようなケースには、「あらかじめ何分と、時間を決めて対応する」〝初期設定〞が重要です。間違っても、慌てて反論したり、相手を説得しようなどと考えてはいけないのです。
  2. ② 自分が納得できる答えを要求するタイプのクレーム:「その答えでは納得いかない」など何度も何度も繰り返し答えを求めてくるクレームです。こういう場合は、100%の患者満足はありえないので、納得して頂けない場合は仕方がないと諦めることも大切です。「残念ですが、今すぐは無理ですので、ご理解ください」などギブアップすることも必要です。
ステップ3:レッドライン超えれば「ブラック」と判断する

それでも解決の兆しすら見えず、〝社会通念〞を逸脱した要求と捉えられた場合は、上記のクレーム対応からスイッチを切り替え、警備員を呼んだり、警察に相談するなどといった対応策に切り替えます。

このように、クレームを色分けすることで、解決できずに悪化した場合にどう変化していくのかという予測がつきやすくなり、対応もしやすくなります。

クレームは医療機関を利用する患者さんから頂戴する「ご不満・ご指導・ご要望」です。まずは、シンプルに「ホワイト」(患者さんからの正当な要求)からスタートし、クレームに対する苦手意識や面倒は避けたい気持ちを払拭することが大切です。真摯に向き合えば、業務改善につながり、患者さんの気持ちの分かる評判の良い医療機関になれるのです。

筆者プロフィール

援川 聡

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株式会社エンゴシステム
代表取締役

大阪府警OB。元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決してきたクレーム対応コンサルタント。2002年「困難なクレームを解決し、企業の危機管理を援護する」をモットーに(株)エンゴシステムを設立。クライアントの“相棒”としてリアルタイムでサポートする傍ら、講演や執筆活動などを通して様々な機関に解決方法・リスクマネジメントのノウハウを伝授している。事例を盛り込みながらの講演は迫力に満ち、「説得力が違う」と聴講者からも絶大な信頼を得ている。