MBA流クリニック経営

第3回:「ライフサイクル理論から見るクリニック経営のポイント」
~創業期のクリニックの戦略:クリニックの順調な成長は“安定した集患力”がもたらす~

船井総合研究所 田熊考治氏

開業直後はまだまだ地域内での医院での認知度が低く、自院の存在が知られていない状態です。そのため、クリニック開業前後に、各種の広告媒体を活用した広報活動に力を入れ、安定して新患が来院する状態を作ることが、その後の医院の成長スピードを大きく左右します。
第3回創業期のクリニック戦略では、クリニックを成長させていく上で、“すぐできる効果的”な集患ノウハウについて、その成功事例や背景にある成功へのセオリーをご紹介します。

本稿で学ぶポイント

  • 患者がクリニックを選ぶ上での顧客心理
  • 顧客心理を踏まえ、WEBを活用した集客策のノウハウ
  • 自院のWEB集客策のセルフチェックと改善点の確認

【ケース編】1つのクリニックで7つのホームページを保有。WEBマーケティングを徹底強化。

クリニックによって、集客がうまくいかない理由は様々です。 “このクリニックは何を実現するのか”というビジョンが曖昧であるなど、そもそものクリニック経営の根底に関わるものもあれば、サービスへの満足度に関する問題に起因することもあります。中でも本稿では、多くのクリニックにおいて散見される課題で、解決が容易、かつ即効性の見込める集客策として、WEB集客に関して取り上げてみたいと思います。

【クリニックの背景】

地方中核都市にある耳鼻咽喉科のAクリニックは、開業場所として、最寄駅から遠い立地で駐車場も備えた場所を選びました。狙いとしては、小さな子供のいる核家族が多いベッドタウンが車で数分の場所にあり、駐車スペースさえあれば、駅から遠い立地にハンディキャップはないだろうとの読みでした。逆に、駅から遠いことで安い賃料の割に広いスペースを確保することができ、待ち合いスペースの充実による医院のイメージ、満足度アップを狙えると踏んだ結果でした。
しかし、いざ開院してみると想像以上に患者が来ず、苦しい状況に立たされていました。当クリニックの医院長は、非常に患者思いの先生で、開業を通して実現したい医療への思いも明確でした。先生を慕う患者さんも多く、勤務医時代の患者さんの来院もあります。
集客活動に関していうと、通常のクリニックと同じように、駅看板や野立て看板なども出していましたが、なかなか新患数が伸びませんでした。

【問題点】

船井総研では、当クリニックの院長より相談を受け、当クリニックの集客がうまくいっていない理由について分析しました。当クリニックでは一般的な広告媒体は十分に活用していましたが、明らかにWEBを用いた集客力が乏しく、その点に大きな課題がありました。当時、当クリニックは、一般的なクリニック案内ページしか開設しておらず、また、検索エンジン対策も不十分であり、診療科と地域の町の名前で検索しても、検索の1ページ目に当クリニックのホームページは表示されず、クリニックを探す患者さんの目には触れていませんでした。

【改善策】

当クリニックのケースでは、WEBを用いた集客への取り組みが不十分でした。そこで、患者さんの病院選びの動線を意識した改善により、手早く集客効果を出すことができるだろうと想定しました。
したがって、当クリニックのホームページ改善を徹底的に行うことにしました。通常のクリニック案内のホームページの他に、疾患に特化したホームページを複数作成し、現在ではアレルギー性鼻炎に特化したホームページ、中耳炎に特化したホームページ、のどの病気に特化したホームページなど、合計で7個のホームページを運用しています。 また、ホームページの閲覧者数を増やすための取り組みとして、クリック課金型のPPC(Pay Per Click)広告を始め、ブログやソーシャルメディアなどの媒体の活用も推進しました。

その結果、ホームページのアクセス数が月間1000程度から2000程度に増加し、ともなって繁忙月には400名以上、閑散月でも200名以上の新患が来院しており、医業収入も安定して増加しています。

【理論編】患者さんの通院先の意思決定プロセスとWEB集客のセオリー

【リード】

インターネットが普及した今日、WEB媒体での集患は非常に重要です。創業時の集客施策としてまず重視しなくてはならないものがWEBを効果的に活用することです。

【AISASモデルで患者の通院先選定プロセスを理解する】

患者さんは、近年のインターネット、とりわけスマホの普及によって、通院先の選定においてインターネットを多用しています。WEBでの効果的な集患を行う上では、患者さんがどのようなプロセスで通院先を決めているのかを理解し、それに応じた集患策を打つことがポイントです。
ここで、患者さんがインターネットを利用して通院先を決める際のプロセスを理解する代表的な消費者行動モデルとして、AISAS(アイサス)モデルと呼ばれるものをご紹介します。これは、Attention:注目、Interest:興味、Search:検索、Action:購買、Share:共有、それぞれの消費者の意思決定プロセスの頭文字を取って名付けたものです。

図1:意思決定モデル AISAS(アイサス)

AISASモデルに当てはめて、患者さんが通院先を選定する典型例を整理したものが図1です。
患者さんは、受診先の検討をする場合、インターネットが利用可能な世代の大半の人がパソコンやスマホを使って検索をします。このタイミングで、患者さんが、自院のホームページにたどり着き、かつ、自院選択の動機付けとして、診療の質への期待が高まるようなコンテンツを用意しておくことが重要です。

表1:ある母親の通院先決定のプロセス例(AISASに当てはめた意思決定プロセス例)

先のケースでご紹介した耳鼻咽喉科クリニックの事例では、コンテンツとして自院の得意な疾患領域のホームページを7つ用意するなど、コンテンツを充実させ、自院の専門性をアピールし、WEBを見た患者さんが、当クリニックの診療レベルに対して期待値を高める取り組みをしました。

【集客目標に応じて最適なWEB施策に取り組む】

加えてですが、集客数の目標に応じて、WEBへの取り組みレベルを最適化する必要があります(表2)。先のクリニックは集患目標に合わせて、最高レベル(レベル4)の取り組みを実施しました。

表2:WEB媒体の使い分けプランフォーマット

先のクリニックの劇的な増患はコンテンツとWEB媒体の適切な使い方によって成し遂げられたものでした。

【WEB集客策を見直したいと思った場合、自院は何をすればいいのか?】

セルフチェックポイント① 集客目標とWEBの集客策が合致しているかチェック

創業期の集客策として自院が実施しているWEBでの集客策は、目標集患数に見合った最適な手段をとれていますか?表2を参考に振り返ってみましょう。

セルフチェックポイント② WEBコンテンツのセルフチェックポイント

次にクリニックホームページの簡易なセルフチェックとしてチェックシートを参考に、ご自身で振り返ってみてください。✔できた項目が2個以下の場合、クリニックのホームページを見直して、取り組みレベルを上げてみましょう。

WEB集客施策簡単セルフチェック

    YES NO
1.

クリニックの理念や目指している医療等、クリニックのビジョンや思いが患者さんのニーズに合わせた表現、患者さんが共感できる視点でで明記されている。

*ポイント;医院長の人物像は具体的に伝わるか?

2.

クリニックの特徴や強み(先生の強みや専門、設置機器や設備等))が専門知識のない患者さんにもわかりやすく明記されている。

*ポイント:どの層をターゲットにしているか?その層にとってメリットのある特徴は何かが表現されているか?

3.

初診患者に診療のプロセスや治療方法等をわかりやすく明記し、初めて来院するにあたっての不安を取り除く情報を記載できているか?

*ポイント:症状解説ページの充実、客観性のある情報(患者さまの声、メディア掲載情報等)が掲載されているか?

※当コンテンツ記事における「ケース」は、各寄稿者が実際のクリニック経営における改善事例をもとに作成したフィクションであり、実在する特定の人物及び団体を指すものではありません。

筆者プロフィール

田熊 考治

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株式会社船井総合研究所
医療支援部 チームリーダー

入社以来、歯科・矯正歯科、医科では耳鼻科・小児科・美容外科などクリニックを中心とした医療業界のコンサルティングに従事。
現在は内科、心療内科、耳鼻咽喉科などの医科診療所に特化したコンサルティングを行っている。
クライアントの医院規模は1ドクター1スタッフにて運営する医院から、6名のドクターを要する大規模医院までさまざまである。
「一過性でない永続する強い医院作り」をテーマに、医院の現状に即した、具体的かつ即実践可能な提案がクライアントからの信頼を得ている。