MBA流クリニック経営

第10回:「クリニックの信頼を高め、来院につなげる方法」
~地域住民勉強会~

株式会社 旭広告社
星 智則

新患数に伸び悩むというケースは、長らくクリニックを経営していると、多くのクリニックの先生方が経験するものですね。
広告等の打ち手を一通り試し、期待した効果を実感できない方には、地域住民を集めた勉強会を開くことをお勧めします。このような会を設けて地域住民と直接対話することは、クリニックに対して好感を持ってもらえる貴重な機会で、何かのきっかけで来院してくれたり、他の患者さんを紹介してもらえる可能性が高くなるのです。勉強会を開くことは大変な手間に思われるかもしれませんが、今回は取り組みやすい勉強会開催のコツについてご紹介いたします。

本稿で学ぶポイント

  • これまで自院に訪れたことなない人たちに、受診に至るきっかけづくりの手段として勉強会の開催という手段があること。

【ケース編】地域住民勉強会に取り組み、増患のきっかけを得たクリニック

【クリニックの背景】

慢性疾患を中心に診ている開業10年近く経つ内科クリニックがありました。規模は小さいながらも各種検査を取り入れ、診断・治療・日常生活上の指導や管理もきめ細かに行っています。クリニックの認知は進み、連携先の病院とも良好な関係を築き、長く通い続けている患者さんもいます。ここ2,3年の一日の来院患者数は40名程度に落ち着いていました。開業後、コツコツと地道に経営に取り組まれ、経営が安定した段階でよくみられる多くの開業医の先生方にも当てはまる光景ですね。

【問題点】

ここ数年で、診療科目が重なるクリニックの近隣での開業が増えてきました。新規に開業したクリニックは、若くて勢いのある医師のもとで華やかな内覧会を行い、開院と共に着実に患者をつかんでいるようでした。院長先生のクリニックでは広告は一通り打ってきており、ホームページの更新も丁寧に続けていますが、新たに情報を発信する手段がなくなってきており、年々集患が容易でなくなってきたことが院長先生の悩みとなっていました。

【改善策】

このことを経営顧問の税理士に相談したところ、これまで利用してきた地域の広告業者ではなく、医院広告を専門とする業者を紹介され、そこならば何か打開策を提案してくれるのではないかと打診されました。
そしてその業者の担当者に会ってこれまでの経緯を話したところ、地域住民に向けた勉強会の開催を提案されました。当初、院長先生は住民を集めて自らが講演するという形式を億劫に感じていましたが、クリニックの待合室を使うことで大掛かりな会にしなくてよいこと、自己紹介と得意とする診療の話題を20~30分程度で短く話せばよいこと、開催により期待される集患・経営への好影響などを説明してもらい、試しに開催してみようという気持ちに傾いてきました。まずは月に1回ペースで3か月間、計3回シリーズを計画することにしました。
勉強会は診察がない土曜日の午後に開催するため、スタッフに開催の目的や趣旨を説明し、当日に席への誘導や来場者とのコミュニケーションを依頼しました。さらに、会計時に患者さんにチラシを渡して勉強会があることを知り合いに広めてほしいと頼んでもらいました。
院内外の掲示物とポスティング・新聞折り込み広告の作成・告知活動は、その業者に任せました。また、椅子の配置換え、プロジェクタの設置等の会場セッティングやホームページにアップするための写真撮影も、その業者に主導してもらうことにしました。
問題はテーマです。来院される患者さんに対して話す場合はいろいろと思いつくのですが、そうでない人たちに何を話せばよいのか迷っていました。とりあえず第1回は「糖尿病のお話」にしようと、院長先生はその業者にチラシを作ってもらうように指示しましたが、内容が漠然としており、糖尿病でない人たちの関心を惹く題目ではないと指摘されました。その業者は、糖尿病をテーマとするのだったら、「自分はひょっとして糖尿病なのではないだろうか?」など疾病に対して注意喚起させるテーマがいいのではないか、と提案してくれました。そこで院長先生は「糖尿病になりやすい生活習慣と前兆について」と方向性を少し変えることにしました。
勉強会は院長先生の経歴の紹介から始まり、テーマについてわかりやすく説明した後、自院での指導や治療法の紹介を行いました。講演の後は個別相談にも応じました。個別相談は数名が希望し、待ってもらっている間は看護師から生活上の注意などを話してもらったりしました。

【結果】

参加者は、院長先生の経歴やこの地に開業した思いを直接知ることによって、院長先生を身近に感じ、クリニックに興味を持ったようでした。そこからもしもの時の受診をしてみよう、知り合いへ紹介してみようという気持ちになりました。
院長先生も参加者の生の声を聴くことができ、他院での治療の話や、「来るのに迷ってしまった」など改善すべき不満やニーズを把握することができました。そしてできることから対応していったことで、クリニックは良い方向へ変わっていくことができました。参加者から発生した良い口コミや、クリニックの経営改善に取り組んだ結果、停滞していた患者数は徐々に増えていき、1年後には1日50名を超える日が珍しくなくなっていました。

【理論編】地域住民勉強会に取り組む際のコツとは

まだ自院を訪れたことがない患者さんたちと接点を持つ機会として「地域住民を集めた勉強会」の開催は有効な方法の一つです。ここでは勉強会を開催するメリットと、運営のノウハウについてご紹介します。

【1.勉強会を開催するメリット】

メリット① 地域での信頼の獲得

勉強会はクリニックの宣伝と地域貢献を兼ねており、その地域で診療を継続するにとどまらず、地域への貢献度を更に高めていく上で大切な役割を果たします。
院長先生の経歴やこの地に開業した経緯を紹介することは、クリニックや院長先生自身に親近感を覚えてもらい、さらに一度足を踏み入れることで医院へ通うことの敷居を低くします。
直接見聞きした情報は、印刷物等で知らされた場合よりも、サービスの選択や評価に強く影響し、人はその影響を無視してクリニックを選択することは難しくなるものです。参加者には感謝の気持ちで接するように心がけてください。

メリット② 患者さんの満たされていないニーズの把握

他院での治療・接遇に対する不満や自院の不便などを直接聞くことができます。
「○○医院で見てもらっているけれどなかなか良くならない」「今通っているところは待ち時間が長い」といった他院に関する話は固定患者さんからは聞けない情報です。そのような不満を持つ患者さんに自院に来てもらうきっかけになる事に加え、自院も同じような不満が持たれていないか見直してみる機会になります。
「当院ではXXという検査を行っているので、別の原因がわかるかもしれません。お薬も見直してみましょうか。」などと会話ができれば、一人一人患者さんを呼び込むことにつながります。

メリット③ 安定した経営基盤の構築

勉強会がもたらす集患効果は、駅広告といった露出が高いタイプの広告と比較して即効性は小さいですが、地道な活動で信頼を獲得できます。従って、長期的展望として、地域への貢献度を高め、更に安定した経営基盤を構築することを目的に検討いただければと思います。
例えば勉強会がきっかけで、1年後に1日当たり5名の患者増になったと仮定します。受診1回あたりの診療単価は約6,000円*、1月当たりの診療日数を20日とすると、年間で720万円の売り上げが増加します。地域勉強会への取り組みでクリニックの売上は大きく変わる可能性があります。
*厚生労働省資料 中医協 総-5 外来医療(その1)平成29年2月9日 を参考

【2.開催のハードルを下げるポイント】

特に初回の開催に至るまでは手順がわからないことがあるかと思います。そのような場合は、業者に入ってリードしてもらう手があります。院内イベントの実績のある業者であれば、いろいろなレベルでのサポートが可能です。チラシの印刷・配布だけでも対応しますし、スタッフへの説明時に同席させて場を仕切ることや、会場セッティングにも応じます。サポートの割合が多いほど費用も掛かってきますが、大きな会ではないので、初回のうちに院長先生やスタッフでノウハウを習得できますし、2回目以降は自院のマンパワーだけでも十分に運営が可能です。
予算を考慮しつつ、ご自身の負担を減らすことを検討してみてください。

【3.参加者を集めるテーマの選びと広告テキストのコツ】

勉強会の集客ターゲットは、自院を訪れたことがない患者さんです。ここで意識していただきたいのが、疾患や診療サービスに対する興味の度合いによって、踏まえるべき(消費者)心理が異なることです。病気にかかっていない人たち(=潜在層)と、現在治療中の患者さん(=顕在層)では、アプローチの仕方が違ってきます。

図1 消費者の属性ピラミッド

ここでは潜在層~準顕在層がターゲットの中心となりますが、その層に向けては、疾患や健康への興味や、来院欲求を喚起するテーマに設定することです。悩み・疑問を解消するといった視点や、疾患への不安を覚えるようなタイトルやサブタイトルも反応率は良くなります。

例)○○には疾患名や症状などが入ります

  • 「知れば怖くない・痛くない○○検査」
  • 「○○と上手に付き合うには」
  • 「○○の陰に潜むさまざまな病気」
  • 「○○患者と家族が日々の生活で困っていること」
  • 「突然家族が倒れたら~○○のお話し~」

また、勉強会へ足を運んでくれる健康に関心の高い人たちは、高齢者、高齢の親をサポートする子世代、子育て世代です。このような世代をターゲットにしたり、その家族までに視野を広げてテーマを考えてみるのも有効です。

・参加を促す広告テキスト

自院を訪れたことがない人たちに足を運んでもらうためにはもう少し工夫が必要です。一つの案として、潜在層~準顕在層が思うであろう疑問や悩みを、Q&Aのような形で広告に掲載しておくということをすれば、知りたいという欲求と関心が生まれ、参加への障害を外せる可能性が高くなります。そのためにはその層の関心事を想定しておくことが必要です。

例)

  • ○○は完治する?
  • ○○は一生薬を飲み続けないといけない?
  • ○○とはどのような病気?
  • ○○(症状)が続くのですが、ひょっとして○○(病名)?
【4.告知のタイミング】

勉強会の告知には、院内外のポスター、ホームページやポスティングや折り込み広告を用いられると思います。特にターゲットに直接届けることができるポスティングや折り込み広告は、告知のタイミングによって効果が変わってきます。著者の経験から、開催直前の2日間続けて露出を行うことをお勧めします。なぜならこれより前に告知しても、忘れられてしまったり、行ってみようという気持ちが薄れてくるからです。この点に留意するとしないでは集客に大きな差が出てきますので、頭の片隅に置いていただければと思います。

【振り返りのポイント】
運営の負担を減らすために業者をうまく使いましょう。
テーマには患者でない人たちの興味を引くような視点が含まれていますか?
ポスティングや折り込み広告を使って告知する場合はタイミングに留意しましょう。

以上

筆者プロフィール

星 智則

写真

株式会社 旭広告社  http://www.asahi-ad.co.jp
クロスメディア部 クロスメディアプロモーション課

医院開業広告に特化した開業支援をおこなっており、現在までに200件以上の医院開業に携わる。
各種広告媒体の展開ノウハウに通じ、開業後のサポートにも定評があり、ドクターからの信頼も厚い。(社)日本医院開業コンサルタント協会認定 コンサルタント。(社)日本医療経営実践協会認定 医療経営士。

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hoshi@asahi-ad.co.jp